
産業廃棄物の収集運搬では、許可を取得することだけでなく、廃棄物の種類や性状に応じた方法で適切に運ぶことが重要です。
同じ産業廃棄物でも、泥状のもの、液状のもの、飛散しやすいもの、重量があるものなど性状はさまざまです。そのため、使用する車両や容器、飛散・流出を防ぐ方法も、実際の状態に応じて考える必要があります。
産廃収集運搬業許可の全体像や費用については、「産廃収集運搬業許可申請サポート」でまとめています。
この記事では、汚泥、廃油、廃プラスチック類、がれき類などを例に、産業廃棄物の種類ごとの運搬方法や、車両・容器を選ぶ際の考え方を解説します。
産業廃棄物は、種類だけでなく、実際の形状や性状によって適した運搬方法が変わります。

たとえば、がれき類のように塊状で重量があるものは、ダンプ車で運搬しやすい一方、汚泥のように水分を多く含むものは、流出を防ぐために水密性や密閉性が重要になります。
また、廃プラスチック類や紙くずのように軽くて飛散しやすいものは、シート掛けや箱型車両などによる飛散防止が必要です。
産業廃棄物の収集運搬では、車両を所有しているだけでは十分ではありません。
運搬する廃棄物と、荷台の形状、車両の仕様、使用する容器が合っているかを確認する必要があります。飛散しやすいものを開放型の荷台でそのまま運ぶ、液状物を漏れ対策なしで積載するなど、廃棄物の性状に合わない方法は避ける必要があります。
同じ品目でも、実際の状態によって運搬方法は変わります。
たとえば、同じ汚泥でも水分量によって必要な対策が異なり、がれき類でも細かく砕けていれば飛散防止が重要になります。そのため、品目名だけでなく、現場でどのような状態で排出されるのかまで確認して運搬方法を決めることが大切です。
ここでは、代表的な産業廃棄物ごとに、性状と運搬時の注意点を見ていきます。

汚泥は、水分を多く含みやすく、流出のおそれがある廃棄物です。そのため、運搬時には水密性や密閉性が重要になります。状態によっては、ドラム缶や密閉容器を使用し、車両としては水密仕様のダンプ、密閉型コンテナ車、内容によってはタンク車が検討されます。

廃油は、漏れ防止が最も重要になる品目です。一般には、クローズドラムなどの密閉容器を使用し、内容や量によってはタンク車で運搬することがあります。積載中の転倒やふたのゆるみにも注意が必要です。

廃酸や廃アルカリは、内容物に応じた容器と車両の選定が重要です。プラスチック容器やケミカルドラムなどが使われることがありますが、単に密閉すればよいわけではなく、材質の適合性まで確認する必要があります。

廃プラスチック類は、軽量でかさばりやすく、飛散しやすいという特徴があります。そのため、コンテナ、箱型車両、フレコンバッグなどを使ったほうが管理しやすい場合があります。開放型の荷台で運ぶ場合でも、シート掛けなどの飛散防止措置が重要です。

これらは比較的軽く、飛散しやすいものが多い品目です。紙くずや繊維くずは風で散りやすく、木くずも形状によっては荷崩れしやすくなります。運搬時には、荷姿を整え、必要に応じて覆いをすることが大切です。

これらは重量があり、破片の飛散や荷崩れに注意が必要な品目です。がれき類はダンプ車で運ばれることが多いですが、積み方が不安定だと落下や偏荷重の原因になります。ガラスくずや陶磁器くずは割れやすいため、積込みや荷下ろし時も慎重な取扱いが必要です。

金属くずは、形状が不規則なものが多く、積載時に安定しにくいことがあります。突起のあるものや長尺のものは、荷崩れや荷台損傷の原因にもなるため、必要に応じて容器を使う、荷締めを行うなどの対応が必要です。

燃え殻、ばいじん、鉱さい、動植物性残さ、動物系固形不要物、動物のふん尿なども、性状に応じた運搬方法を考える必要があります。飛散しやすいもの、水分や臭気を伴うものなどは、名称だけで判断せず、実際の状態に応じて方法を決めることが重要です。

建設現場や解体現場では、複数の品目が混ざった状態で排出されることがあります。
このような混合廃棄物では、がれき類、木くず、廃プラスチック類など、それぞれの性状を踏まえて運搬方法を考える必要があります。特に、飛散しやすいものや破損しやすいものが含まれる場合は、単一品目より慎重な対応が必要です。
また、分別したものは、運搬の段階で再び混ざらないよう注意することも重要です。

廃棄物の種類を整理したうえで、次に車両の考え方を見ていきます。
なお、収集運搬では車両の構造だけでなく、「産業廃棄物収集運搬車」の表示や、許可証の写し、マニフェスト等の書面の備え付けも実務上の基本です。運搬方法を考える際は、こうした点もあわせて確認しておく必要があります。

ダンプ車は、がれき類などの塊状・重量物の運搬に向いている代表的な車両です。一方で、荷台が開放されているため、細かいものや軽いもの、水分を多く含むものには注意が必要です。必要に応じてシート掛けや水密性の確保を考える必要があります。

平ボディ車は、容器に入れた廃棄物や、荷姿が安定しているものの運搬に向いています。ただし、開放型であるため、飛散防止や転倒防止の措置が必要です。ドラム缶やフレコンバッグなどを積載する場合は、固定方法まで考えておくことが重要です。

バン車や箱型車両は、飛散しやすいもの、雨対策が必要なものの運搬に向いています。外部に廃棄物が露出しにくく、飛散防止にも有効です。

コンテナの脱着がしやすく、現場作業との相性がよい車両です。複数の現場を回る場合や、あらかじめコンテナを設置しておく場合に効率的ですが、コンテナ自体の管理や飛散防止措置は別途必要です。

液状物の運搬では、タンク車が用いられることがあります。廃油や、内容によっては汚泥、ふん尿など、流動性のあるものではタンク車が適している場合があります。
実務では、品目名だけ覚えるより、廃棄物の状態と車両・容器の組み合わせを具体的に考えるほうが役立ちます。
汚泥は流出リスクがあるため、水密仕様の車両や密閉容器との組み合わせが基本的な考え方になります。
廃油は漏えい防止が最優先です。そのため、クローズドラムなどの密閉容器を用い、内容や量によってはタンク車を使うことが考えられます。
廃プラスチック類は軽くて飛びやすいため、箱型車両、コンテナ、フレコンバッグなどとの相性がよい場合があります。
がれき類はダンプ車との相性がよい場合がありますが、積込み方が不安定だと走行中の落下や偏荷重の原因になります。
廃酸や廃アルカリは、単に密閉すればよいわけではありません。内容物に適した容器か、材質に問題はないかまで確認する必要があります。
混合廃棄物では、見た目だけで判断せず、何が含まれているかを確認することが重要です。がれき類が中心でも、廃プラスチック類や紙くずが混じっていれば飛散防止を重視する必要があります。実務では、混ざっている内容を見て、より慎重な方法を選ぶ視点が大切です。
産業廃棄物の運搬では、積載物を外へ出さないことが基本です。
廃プラスチック類、紙くず、繊維くず、細かいがれきなどは、飛散しやすい品目です。そのため、シート掛け、箱型車両、コンテナの使用など、外部へ出にくい方法を検討する必要があります。
汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリなどは、流出すると周辺への影響が大きくなりやすい品目です。密閉容器の使用、水密性のある荷台、適切な固定方法など、流出を前提に対策を考えることが重要です。
動植物性残さや動物のふん尿など、臭気を伴うものでは、飛散や流出だけでなく周辺環境への配慮も必要です。運搬時間、運搬経路、容器の密閉性なども含めて整理しておくと、実務上のトラブルを防ぎやすくなります。

産業廃棄物の中には、石綿や水銀を含むものなど、通常より慎重な取扱いが必要なものがあります。
また、廃棄物の種類や性状によっては、特別管理産業廃棄物に該当し、より厳格な収集・運搬や処理が必要になります。
石綿含有産業廃棄物は、収集・運搬時に破砕せず、他の廃棄物と混合しないよう区分して取り扱う必要があります。また、運搬中に石綿が飛散・流出しないよう、シート掛けや容器への収納など、廃棄物の形状や状態に応じた対策を行うことが重要です。
水銀使用製品産業廃棄物は、運搬中の破損を防ぐことが重要です。容器に入れ、必要に応じて緩衝材を使用し、荷台上で転倒や衝突が起きないよう固定します。また、他の廃棄物と区分して取り扱う必要があります。
水銀含有ばいじん等は、飛散や流出を防ぐため、性状に応じた蓋付き容器などに収納して運搬します。運搬中に容器が転倒したり内容物が漏れたりしないよう、荷台上で確実に固定しておくことも重要です。

実際の収集運搬では、廃棄物の種類だけでなく、現物の状態や使用する車両・容器、書類との整合まで確認しておくことが重要です。
ここでは、現場で見落としやすいポイントを整理します。
同じ品目でも、水分量や大きさ、飛散しやすさなどによって適した運搬方法は変わります。品目名だけでなく、実際の状態まで確認することが重要です。
使用する車両や荷台の形状が、運搬する廃棄物に適しているかを確認します。積載できるだけでなく、飛散・流出・荷崩れを防げるかまで確認する必要があります。
ドラム缶、プラスチック容器、フレコンバッグなどは、破損や劣化がないか積載前に確認します。
混合廃棄物では、何が含まれているか、どこまで分別されているかを確認し、必要な容器や積載方法を決めます。
契約書やマニフェストの内容と、実際に運搬する産業廃棄物の種類や状態にズレがないか確認します。
産廃収集運搬業許可の申請要件、必要書類、講習会、申請の流れについては、「産廃収集運搬業許可の基礎知識」もあわせてご確認ください。

産業廃棄物の運搬方法は、廃棄物の種類だけでなく、実際の性状や排出時の状態によっても変わります。
汚泥、廃油、廃プラスチック類、がれき類、混合廃棄物など、それぞれに適した車両や容器を選び、飛散・流出・破損を防ぐことが重要です。
実務では、品目名だけで判断せず、現物の状態、車両との適合性、容器の安全性、分別状況まで確認しておくことが、適切な収集運搬につながります。

【 産廃収集運搬業許可のご相談 】
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・東京都葛飾区金町出身。平成21年の開業以来、15年以上にわたり地域の事業者を中心に各種行政手続きのサポートを行う行政書士。
建設業許可、産業廃棄物収集運搬許可、各種許認可申請など、事業者向け手続きにも対応している。行政書士としては珍しい「一級土木施工管理技士」の資格と、建設コンサルタントとしての実務経験を有しており、制度面だけでなく実務の視点からのアドバイスを行っている。
『週刊新潮』『女性自身』『産経新聞』などで取材協力。著書に『行政書士が教える墓じまい・改葬の進め方』(税務経理協会)がある。
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