
飼い犬が散歩中や自宅の敷地内などで人を咬んでしまった場合、飼い主には、相手方への対応だけでなく、保健所等への届出や獣医師による狂犬病の確認など、必要な手続きがあります。
普段はおとなしい犬でも、驚いたときや体調が悪いときなどに、思わぬ事故につながることがあります。事故が起きたときは、まず相手方の安全を確認し、そのうえで必要な届出や確認を進めることが大切です。
この記事では、飼い犬が人を咬んでしまったときに確認したい届出先、獣医師による確認、犬の登録や狂犬病予防注射の記録について整理します。

飼い犬が人を咬んでしまったときは、まず犬を安全な場所に移し、再び人に近づかないようにします。散歩中であればリードを短く持ち、自宅などであれば別室やケージに移すなど、周囲の安全を確保します。
次に、相手方のけがの状態を確認します。出血がある場合や痛みが強い場合はもちろん、傷が小さく見えても、咬み傷は感染するおそれがあるため、傷口を流水で洗い、早めに医療機関を受診してもらうことが大切です。
その後、事故が起きた日時や場所、咬んだときの状況、相手方のけがの状態などを整理しておきます。犬の登録状況や狂犬病予防注射の接種状況も、後の届出や確認に必要になります。
事故直後は、責任や費用負担について急いで結論を出すよりも、まず安全確保とけがへの対応を行い、そのうえで必要な届出を進めます。

犬が人を咬んだ場合、飼い主は事故について自治体へ届け出る必要があります。東京都では、飼っている動物が人の生命や身体に危害を加えたときは、適切な応急処置と再発防止措置を行ったうえで、事故発生から24時間以内に届け出ることとされています。
届出先は、事故が起きた場所によって異なります。東京都内では、特別区で起きた犬による事故は、事故発生地を管轄する区の保健所が窓口になります。そのため、飼い主の住所ではなく、事故が起きた場所を基準に確認します。
届出には「事故発生届出書」を使用します。事故が起きた日時や場所、犬の情報、相手方のけがの状況、事故後に行った対応などを整理しておくと、手続きを進めやすくなります。
また、犬が人を咬んだ場合には、この届出とは別に、48時間以内に獣医師による狂犬病の検診を受けさせる必要があります。

犬が人を咬んだ場合には、狂犬病に関する獣医師の確認も必要です。東京都では、事故発生から48時間以内に、その犬について狂犬病の疑いがないか獣医師の検診を受けさせることとされています。
動物病院を受診するときは、通常の健康診断ではなく、人を咬んだ事故に伴う狂犬病の確認であることを伝えます。
自治体によっては、獣医師が発行する証明書などの提出を求められることもあるため、届出先の窓口に必要な書類や提出方法を確認しておくとよいでしょう。

犬を飼う場合には、犬の登録と狂犬病予防注射が必要です。
咬傷事故が起きたときには、事故の状況だけでなく、犬の登録状況や狂犬病予防注射の接種状況も確認されます。そのため、鑑札、狂犬病予防注射済票、直近の接種記録などをすぐに確認できるようにしておくことが大切です。
マイクロチップの登録情報や動物病院の通院記録がある場合には、必要に応じて確認できるよう整理しておくとよいでしょう。

保健所等への届出では、飼い主や犬の情報、事故が起きた状況、相手方のけがの状態などを確認します。
主な確認事項は、次のとおりです。
届出に備えて、犬の鑑札や狂犬病予防注射済票、獣医師の確認に関する書類などを整理しておくと、手続きを進めやすくなります。

犬が人を咬んでしまった後は、事故の経過を後から確認できるよう、記録を残しておくことも大切です。
時間が経つと、事故が起きた状況や、その後に行った対応の内容が曖昧になりやすくなります。保健所等への届出や獣医師の確認を進めた記録も含め、時系列で整理しておくと確認しやすくなります。
記録しておきたい主な内容は、次のとおりです。
メモや写真、提出した書類の控えなど、後から確認できる形で残しておくとよいでしょう。
なお、この記事では主に保健所等への届出や狂犬病の確認など、公的な手続きを取り上げています。治療費や示談などの問題は、これらの手続きとは別に考える必要があります。
犬が人を咬んでしまった後は、同じ事故を繰り返さないための確認も必要です。事故が起きた状況を振り返り、犬の管理方法や周囲の安全対策を見直します。
散歩中の事故であれば、リードの長さ、首輪やハーネスの緩み、犬と通行人との距離などを確認します。自宅や店舗の敷地内で事故が起きた場合には、門扉や玄関、来客時の犬の管理方法などを見直しておくとよいでしょう。
飼い犬が人にけがをさせた場合の管理責任や事故後の対応については、別記事「飼い犬が人にけがをさせたときの確認事項」で整理しています。
犬が人を咬んだ事故と、犬同士の事故では、確認すべき内容が異なります。
犬が人を咬んだ場合には、保健所等への届出や、狂犬病に関する獣医師の確認が必要になります。一方、犬同士の事故では、けがをした犬の診察、相手方の飼い主との連絡、ドッグランや施設を利用していた場合には、そのルールの確認などが中心になります。
犬同士のトラブルについては、別記事「犬同士のトラブルが起きたときの確認事項」で整理しています。

ペットホテル、トリミングサロン、犬のしつけ教室、ドッグラン、ペットショップなど、事業として犬を扱う場所でも咬傷事故が起きることがあります。
犬が人を咬んだ場合には、一般の飼い主と同様に、保健所等への届出や狂犬病に関する獣医師の確認が必要になります。
また、事故が起きた日時や状況、従業員が行った対応、利用者への説明、再発防止のために見直した内容などを記録しておくことも大切です。日頃から、事故発生時の連絡先や対応手順を整理しておくとよいでしょう。

飼い犬が人を咬んでしまったときは、まず犬を安全な場所に移し、相手方のけがの状態を確認します。傷が小さく見えても、咬み傷は感染するおそれがあるため、早めに医療機関を受診してもらうことが大切です。
そのうえで、事故が起きた場所を管轄する保健所等へ連絡し、必要な届出を行います。東京都では、事故発生から24時間以内の届出と、48時間以内の獣医師による狂犬病の検診が必要です。
事故後は、事故の日時や場所、犬の状態、相手方のけがの状況、届出や動物病院での確認内容などを記録しておくとよいでしょう。
治療費や示談などの問題は、公的な届出とは別に整理する必要があります。まずは必要な届出と確認を確実に進めることが大切です。

・東京都葛飾区金町出身。平成21年の開業以来、15年以上にわたり地域の事業者を中心に各種行政手続きのサポートを行う行政書士。
建設業許可、産業廃棄物収集運搬許可、各種許認可申請など、事業者向け手続きにも対応している。行政書士としては珍しい「一級土木施工管理技士」の資格と、建設コンサルタントとしての実務経験を有しており、制度面だけでなく実務の視点からのアドバイスを行っている。
『週刊新潮』『女性自身』『産経新聞』などで取材協力。著書に『行政書士が教える墓じまい・改葬の進め方』(税務経理協会)がある。
これまでのメディア掲載・著書・講演実績は「メディア掲載・著書・講演実績」でご紹介しています。