
犬と暮らしていると、来客時や散歩前、外の物音に反応したときなどに犬が鳴く場面があります。
犬にとって鳴くことは自然な行動の一つです。一方で、鳴き声が長く続いたり、早朝や深夜に繰り返されたりすると、近隣とのトラブルにつながりやすくなります。
飼い主側では「少し鳴いているだけ」と感じていても、隣家や周囲の方にとっては、毎日の生活の中で気になる音になっていることもあります。
この記事では、犬の鳴き声で近隣から指摘を受けたときや、トラブルを防ぐために確認しておきたい事項を整理します。

犬の鳴き声によるトラブルは、単に犬が一度鳴いたというだけで問題になるものではありません。
一方で、鳴き声が長時間続く、毎日のように繰り返される、早朝や深夜に響くといった状況では、近隣の生活に影響が出やすくなります。特に住宅が密集している地域では、窓を閉めていても音が伝わりやすくなります。
また、飼い主が在宅しているときは静かでも、留守番中に鳴き続けているケースでは、本人が状況に気づきにくい面があります。
犬の鳴き声が気になる場面は、家庭によって受け止め方が異なります。病気で静養している方、受験生、小さな子どもがいる家庭、夜勤明けで日中に休む方など、近隣の生活リズムによっても感じ方は変わります。
そのため、鳴き声の問題では、「こちらでは気にならない」という感覚だけで判断せず、どの時間帯に、どのくらい鳴いているのかを客観的に見直すことが出発点になります。

近隣から犬の鳴き声について指摘を受けたときは、まず事実関係を確認します。指摘された内容に納得できないと感じることもありますが、すぐに反論してしまうと、鳴き声の問題だけでなく、近隣関係そのものが悪化するおそれがあります。
最初に見ておきたいのは、鳴き声が出る時間帯、鳴いている長さ、鳴くきっかけです。たとえば、朝の散歩前に鳴くのか、来客や通行人に反応して鳴くのか、飼い主が外出している間に鳴くのかによって、見直す内容は変わります。
確認しておきたい内容は、次のとおりです。
留守中の鳴き声は、飼い主が直接確認しにくい部分です。自宅内の状況を把握するために、室内カメラや録音機能を利用する方法も考えられます。ただし、近隣住宅や通行人を無断で撮影するような使い方は避け、自宅内の状況確認にとどめます。

犬が鳴き続ける背景には、不安、警戒、退屈、運動不足、要求、体調の変化など、さまざまな原因が考えられます。
鳴いたときだけ叱っても、原因が残ったままでは改善につながりにくくなります。まずは、犬がどのような場面で鳴いているのかを見ながら、生活リズムや飼育環境を見直します。
たとえば、外の通行人や車の音に反応して鳴く犬であれば、外が見えにくい場所に犬の居場所を移す、防音カーテンを使う、窓を開けたまま長時間過ごさせないといった工夫が考えられます。
留守番中に鳴き続ける場合には、散歩や遊びの時間、留守番前の過ごし方、犬が一人で過ごす時間の長さなどを見直します。また、急に鳴き方が変わったときや、落ち着かない様子が続くときは、体調不良や加齢による変化が関係している可能性もあります。そのようなときは、動物病院への相談も選択肢になります。
しつけや行動面で悩む場合には、犬の行動に詳しい訓練士やドッグトレーナーに相談する方法もあります。

近隣から鳴き声について指摘を受けると、飼い主としては戸惑う場面もあります。「うちの犬だけが悪いのだろうか」「そこまで大きな音ではないはずだ」と感じるかもしれません。
ただ、最初から相手の受け止め方を否定してしまうと、話し合い以前に感情的な対立になりやすくなります。まずは、いつ、どの時間帯に、どのような鳴き声が気になっているのかを落ち着いて確認することが重要です。
そのうえで、自宅側でも鳴き声の状況を確認し、改善できる点がないかを見直します。すぐに大きな対策ができない場合でも、散歩時間を変える、窓を閉める時間を増やす、犬の居場所を変えるなど、小さな見直しから始められます。
近隣トラブルでは、鳴き声そのものだけでなく、その後の対応によって問題が大きくなる場合もあります。指摘を受けた内容、確認した状況、見直した内容を残しておくと、後から経過を整理しやすくなります。

犬の鳴き声について、当事者同士だけで整理しにくい場合は、住んでいる地域や建物の種類に応じた相談先を確認します。
戸建住宅では、自治体の生活環境担当窓口、動物愛護担当窓口、保健所などが相談先になる場合があります。相談先の名称や担当部署は自治体によって異なるため、まずは市区町村の窓口で確認すると探しやすくなります。
マンションや賃貸住宅では、管理会社、管理組合、貸主への相談が関係します。ただし、この部分は建物のルールや契約内容に関わるため、詳しい確認事項は別記事「マンションでペットを飼うときの確認事項」で整理しています。
自治体や管理会社に相談する際には、感情的な説明だけではなく、日時、状況、鳴き声の程度、これまでの経緯を整理して伝えると、内容を把握してもらいやすくなります。
なお、法的な責任の有無や損害賠償、慰謝料、差止めなどが問題になる場合は、弁護士への相談が適しています。

犬の鳴き声に関するトラブルでは、時間が経つと「いつ、どのような状況だったのか」が曖昧になりやすくなります。そのため、近隣から指摘を受けたときや、飼育環境を見直したときは、簡単なメモを残しておくと後から振り返りやすくなります。
残しておきたいものとしては、次のようなものがあります。
記録は、相手を責めるためだけのものではありません。自宅の状況を見直し、改善できる点を把握するためにも役立ちます。また、管理会社や自治体へ相談するときにも、日時や経緯がまとまっていると説明しやすくなります。

ペットホテル、トリミングサロン、しつけ教室、犬の一時預かりなど、事業として犬を預かる場合には、家庭で犬を飼う場合以上に鳴き声への配慮が必要になります。
預かる犬の頭数が増えると、1頭が鳴いたことをきっかけに、ほかの犬も反応して鳴きやすくなります。また、犬にとって慣れない場所では、不安や緊張から鳴き声が増えることも考えられます。
住宅地や賃貸物件で事業を行う場合は、周囲への音の伝わり方、営業時間、預かる頭数、犬を待機させる場所などを事前に整理しておきます。
第一種動物取扱業の登録が必要になる事業では、飼養施設、動物取扱責任者、標識、帳簿、管理方法なども関係します。鳴き声の問題は、近隣配慮だけでなく、事業運営上のリスクとしても考えておく必要があります。

犬の鳴き声は、犬と暮らすうえで自然に生じるものですが、時間帯や頻度、住宅環境によっては近隣トラブルにつながります。近隣から指摘を受けたときは、感情的に反論するのではなく、まず鳴き声の時間帯、状況、原因、飼育環境を整理することが必要です。
自治体、管理会社、動物病院、訓練士など、状況に応じた相談先を確認しておくと、問題を一人で抱え込まずに整理しやすくなります。
ペットとの暮らしでは、思わぬ問題が生じる場面があります。日頃からルールや契約内容、周囲への配慮を見直しておくことで、不要なトラブルを防ぎやすくなります。

・東京都葛飾区金町出身。平成21年の開業以来、15年以上にわたり地域の事業者を中心に各種行政手続きのサポートを行う行政書士。
建設業許可、産業廃棄物収集運搬許可、各種許認可申請など、事業者向け手続きにも対応している。行政書士としては珍しい「一級土木施工管理技士」の資格と、建設コンサルタントとしての実務経験を有しており、制度面だけでなく実務の視点からのアドバイスを行っている。
『週刊新潮』『女性自身』『産経新聞』などで取材協力。著書に『行政書士が教える墓じまい・改葬の進め方』(税務経理協会)がある。
これまでのメディア掲載・著書・講演実績は「メディア掲載・著書・講演実績」でご紹介しています。