
「遺言書は財産の多い人が作るもの」「家族仲が良ければ必要ない」と考えている方も少なくありません。
しかし、遺言書の必要性は、財産の金額だけで決まるものではありません。相続人の関係や財産の内容によっては、遺言書がないことで、相続人全員による遺産分割協議が必要となり、手続きに時間がかかる場合があります。
特に、子どもがいないご夫婦、前婚の子がいる方、主な財産が自宅である方、法律上の婚姻をしていないパートナーに財産を残したい方などは、元気なうちに遺言書の作成を検討することが大切です。
この記事では、遺言書の必要性が高い代表的な7つのケースと、作成する際の注意点を解説します。
葛飾区で遺言書作成を検討している方は、作成方法や必要書類、費用などをまとめた「【葛飾区】遺言書作成完全ガイド」もご確認ください。

結論:相続人の関係が複雑な場合や、自宅など分けにくい財産が中心の場合は、遺言書がないことで相続手続きが複雑になり、ご家族の負担が大きくなる可能性があります。
遺言書の必要性は、財産の金額だけで決まるものではありません。家庭裁判所で扱われた遺産分割事件には、遺産額が5,000万円以下のケースも多く含まれています。
次のチェックリストで、ご自身が遺言書の作成を検討した方がよいケースに当てはまるか確認してみてください。

まずは、ご自身が次の項目に当てはまるか確認してみてください。該当する項目がある場合は、遺言書の作成を検討しておくとよいでしょう。
該当する場合に、なぜ遺言書の作成を検討した方がよいのか、次から代表的なケースごとに説明します。
ここからは、遺言書の作成を検討した方がよい代表的な7つのケースを紹介します。

子どものいないご夫婦は、遺言書の作成を特に検討した方がよい代表的なケースです。
夫が亡くなった場合、妻が必ず全財産を相続するわけではありません。夫に子どもがいない場合、夫の父母などの直系尊属が相続人となり、直系尊属がすでに亡くなっている場合は、夫の兄弟姉妹が相続人となります。
例えば、妻と夫の兄弟姉妹が相続人となる場合、自宅の名義変更をするには、原則として相続人全員による遺産分割協議が必要です。
兄弟姉妹と疎遠であったり、財産の分け方について意見が合わなかったりすると、相続手続きが長引くことがあります。また、妻が自宅を取得し、他の相続人へ代償金を支払う内容となった場合、十分な預貯金がなければ、自宅の売却を検討せざるを得ないこともあります。
遺言書で「妻に全財産を相続させる」と定めておく方法があります。兄弟姉妹には遺留分がないため、夫の父母などの直系尊属がすでに亡くなっている場合は、妻に財産を残しやすくなります。
手続きを確実に進めたい場合は、公正証書遺言を検討するとよいでしょう。また、妻が先に亡くなっていた場合に備えて、次に財産を渡す人を定める予備的な内容も検討できます。
子どものいないご夫婦の遺言書については、「お子さんがいない夫婦の遺言書作成ガイド」で詳しく解説しています。

再婚しており、前婚の配偶者との間に子どもがいる場合も、遺言書の作成を特に検討した方がよいケースです。
前婚の子にも、現在の配偶者との間の子と同じ相続権があります。本人が亡くなった後、現在の配偶者や子どもは、前婚の子を含む相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
これまで交流がほとんどなかった場合や、家族関係に複雑な事情がある場合は、連絡や話し合いに時間がかかり、相続手続きが長引くことがあります。
遺言書ですべての財産の行き先を定めておけば、原則として遺産分割協議を行わずに、遺言書の内容に沿って相続手続きを進めることができます。
ただし、前婚の子にも遺留分があります。現在の配偶者や特定の子に多く財産を残す場合は、他の相続人の遺留分にも配慮して、財産の分け方を検討する必要があります。あわせて、付言事項に遺言書を作成した理由や家族への思いを記しておくことで、ご自身の考えを伝えることができます。
家族関係が複雑な場合は、遺言者本人の意思と作成経緯を明確に残しやすい公正証書遺言を検討するとよいでしょう。
あわせて、遺言書の内容に沿って手続きを進める遺言執行者を指定しておくと、相続手続きを円滑に進めやすくなります。

主な財産が自宅などの不動産で、預貯金があまり多くない場合も、遺言書の作成を検討した方がよいケースです。
現金は分けやすい一方、不動産はそのままでは均等に分けることができません。
例えば、子どもが2人いて、主な遺産が2,000万円相当の自宅だけの場合、法定相続分はそれぞれ2分の1です。長男が自宅を取得し、次男に代償金を支払う内容で合意した場合、長男には1,000万円程度の資金が必要になります。
十分な預貯金を用意できなければ、自宅を売却して代金を分けることや、複数の相続人による共有名義にすることを検討せざるを得ない場合があります。
遺言書で、自宅を取得する人や、その他の財産の分け方をあらかじめ定めておく方法があります。ただし、自宅と預貯金の金額に大きな差がある場合は、他の相続人の遺留分にも配慮しながら、財産全体の分け方を検討する必要があります。
不動産を含む財産の分け方を明確に定めたい場合は、公正証書遺言を検討するとよいでしょう。内容が比較的シンプルな場合は、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法もあります。

長年一緒に生活していても、法律上の婚姻をしていない内縁のパートナーには、原則として相続権がありません。
本人が亡くなった場合、財産は法律上の相続人である子ども、親、兄弟姉妹などが相続します。
内縁のパートナーが自宅に住んでいた場合でも、その自宅を相続できるとは限りません。住まいや生活費について、十分な準備がないまま困ることがあります。
遺言書で「内縁のパートナーに財産を遺贈する」と定めておく方法があります。
ただし、子どもや親など遺留分を有する相続人がいる場合は、遺留分にも配慮しながら、残す財産の内容や割合を検討する必要があります。あわせて、付言事項に遺贈する理由や感謝の気持ちを記しておくことで、ご自身の考えを伝えることができます。
内縁のパートナーへの遺贈を確実に実現したい場合は、公正証書遺言を検討するとよいでしょう。

独身で、法律上の相続人となる親族がいない場合も、遺言書の作成を検討した方がよいケースです。
相続人がいない場合は、家庭裁判所によって相続財産清算人が選任され、債務の支払いや財産の清算が行われます。その後、特別縁故者への財産分与が認められなかった財産は、最終的に国庫へ帰属します。
お世話になった友人や団体などに財産を残したい場合は、遺言書で遺贈先を定めておく必要があります。ただし、団体によっては受け取れない財産や、事前の確認が必要な場合があります。特に不動産を遺贈する場合は、受け入れ条件をあらかじめ確認しておくことが大切です。
遺言書が見つからないことや、内容の確認に時間がかかることを防ぐため、公正証書遺言を検討するとよいでしょう。あわせて、遺言書の内容に沿って手続きを進める遺言執行者を指定しておくと、遺贈の手続きを進めやすくなります。
遺贈寄付については、「遺言書で寄付(遺贈)するには?」で詳しく解説しています。

介護や生活の支援をしてくれた子など、特定の子に多く財産を残したい場合も、遺言書の作成を検討した方がよいケースです。
遺言書がない場合は、原則として法定相続分を基準に、相続人全員で遺産分割協議を行います。
介護などで特別な貢献があった場合には、寄与分が認められることもありますが、具体的な事情によって判断されるため、必ず認められるとは限りません。そのため、介護をした子が「自分だけ負担が大きかった」と感じ、兄弟姉妹の間で不満が生じることがあります。
遺言書で、介護をしてくれた子に多く財産を残すよう指定できます。
ただし、他の子にも遺留分があるため、財産の分け方を決める際は、遺留分にも配慮する必要があります。あわせて、付言事項に介護への感謝や財産の分け方を決めた理由を記しておくことで、ご自身の考えを伝えることができます。
他の相続人との間で意見の違いが生じる可能性がある場合は、遺言者本人の意思や作成経緯を明確に残しやすい公正証書遺言を検討するとよいでしょう。

会社を経営している方や、個人事業を営んでいる方、賃貸不動産などの事業用資産を所有している方も、遺言書の作成を検討した方がよいケースです。
遺言書がない場合、自社株式や事業用資産が複数の相続人に分散する可能性があります。
自社株式が後継者以外にも分かれると、株主総会での意思決定が複雑になり、後継者が安定して経営を続けにくくなります。また、事業用不動産や設備などが共有名義になると、管理や売却、名義変更の際に、共有者全員の協力が必要となる場合があります。
遺言書で、自社株式や事業用資産を後継者に相続させるよう指定しておく方法があります。ただし、他の相続人に遺留分があるときは、預貯金やその他の財産を含め、財産全体の分け方を調整する必要があります。
事業承継に関する内容を明確に残すには、公正証書遺言が適しています。あわせて、税理士や司法書士などの専門家と連携し、自社株式の評価、相続税、会社関係の手続きについても事前に確認しておくことが大切です。

遺言書を作成しておくことで、財産の分け方や財産を残したい相手を、ご自身の意思で示すことができます。
遺言書ですべての財産の分け方を定めておけば、原則として相続人全員による遺産分割協議を行わずに、相続手続きを進められます。
内縁のパートナーやお世話になった方など、法律上の相続人ではない人にも、遺言書によって財産を遺贈できます。
付言事項に、財産の分け方を決めた理由や家族への感謝を記しておくことで、ご自身の考えを伝えられます。
遺言書はご自身で作成することもできますが、次のような場合は、行政書士へ相談することで、必要な事項を整理しながら作成を進められます。
不動産、預貯金、自社株式など複数の財産がある場合や、前婚の子、内縁のパートナーなどが関係する場合は、内容を慎重に整理する必要があります。
必要書類の確認、公証役場との事前調整、遺言内容の原案整理などについてサポートを受けられます。
財産の分け方や遺言執行者の指定について、一般的な制度や作成時の注意点を確認できます。
自筆証書遺言の形式や記載内容を確認し、作成時の不備を減らすための助言を受けられます。
葛飾区での遺言書作成については、「【葛飾区】遺言書作成完全ガイド」で詳しく解説しています。

遺言書作成に関して、よくいただくご質問にお答えします。
A1:財産の金額だけで、遺言書の必要性が決まるわけではありません。
主な財産が自宅などの不動産である場合や、相続人同士の関係が複雑な場合は、財産が多くなくても遺産分割協議に時間がかかる可能性があります。遺言書の種類については、「遺言書の選び方と種類・違いを比較」も参考にしてください。
A2:ご自身の意思を明確に伝えられるうちに作成することが大切です。
認知症と診断されたことだけで、直ちに遺言書を作成できなくなるわけではありませんが、遺言内容を理解し、自分の意思を伝えられない状態では、有効な遺言書を作成できません。作成する時期については、「遺言書はいつ作るべき?」で詳しく解説しています。
A3:年齢にかかわらず、前婚の子がいる方、内縁のパートナーに財産を残したい方、未成年の子がいる方、事業を営んでいる方などは、遺言書の作成を検討しておくとよいでしょう。
ご自身の状況に応じて確認したい事項は、「遺言書作成チェックリスト50項目」にまとめています。

遺言書は、単に財産の分け方を決めるためだけの書類ではありません。相続人同士の話し合いの負担を減らし、ご自身の考えや家族への思いを伝えるための大切な備えでもあります。
特に、子どもがいない方、前婚の子がいる方、主な財産が自宅である方、内縁のパートナーに財産を残したい方、事業を営んでいる方などは、元気なうちに遺言書の作成を検討しておくとよいでしょう。
「自分には遺言書が必要なのか」「どの種類の遺言書を選べばよいのか」と迷われている方は、大塚法務行政書士事務所へご相談ください。
葛飾区金町の大塚法務行政書士事務所では、相続人や財産の状況を確認しながら、遺言内容の整理、公正証書遺言の原案作成、公証役場との事前調整などをサポートしています。初回相談は無料です。簡単な疑問でも、お気軽にお問い合わせください。

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・東京都葛飾区金町出身。平成21年の開業以来、15年以上にわたり地域に密着して遺言・相続・墓じまいのサポートを行う。行政書士のほか、一級土木施工管理技士の資格を有し、建設コンサルタントとしての実務経験もある。
『週刊新潮』『女性自身』『産経新聞』など、お墓の専門家として取材協力多数。 著書に『行政書士が教える墓じまい・改葬の進め方』(税務経理協会)がある。
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