デジタル遺産とは?口座の探し方と相続手続き|遺言書での対策

デジタル遺産とは?口座の探し方と相続手続き|遺言書での対策

ネット銀行、ネット証券、暗号資産などのデジタル遺産について、口座の探し方、相続手続き、スマートフォンを確認する際の注意点を行政書士が解説します。財産情報を整理し、遺言書で備える方法についてもまとめています。
行政書士 大塚 博幸
行政書士 大塚 博幸

ネット銀行・暗号資産のデジタル遺産相続で悩む家族
「亡くなった父のスマートフォンに、ネット銀行のアプリらしきものがある」「暗号資産を保有していると聞いていたが、利用していた取引所もパスワードも分からない」


ネット銀行、ネット証券、暗号資産などのデジタル遺産は、通帳や証書が残らないことも多く、相続人がその存在を把握できない場合があります。


この記事では、デジタル遺産の範囲、口座や証券会社の探し方、相続手続き、スマートフォンを確認する際の注意点について解説します。あわせて、生前に財産情報を整理し、遺言書で備える方法についてもまとめています。


【この記事の結論(3行でわかる要点)】

 

【調 査】パスワード解除より、利用していた金融機関やサービスの特定を優先。郵便物、通帳の取引履歴、メール、スマートフォンのアプリから手がかりを探す。

 

【手続き】ネット銀行、ネット証券、暗号資産も相続手続きが必要。各金融機関や取引所の案内に従って必要書類をそろえる。

 

【対 策】利用先と財産情報を生前に整理し、遺言書とは別に一覧を残しておく。

 

葛飾区で遺言書の作成を検討している方は、「【葛飾区】遺言書作成完全ガイド」もご確認ください。



デジタル遺産とは?ネット銀行・証券・暗号資産などの範囲

デジタル遺産とは、インターネット上のサービスやスマートフォン、パソコンなどを通じて管理されている財産や契約、データのことです。


金銭的な価値があり相続の対象となるものと、利用規約などにより引き継ぐことが難しいアカウントやデータがあるため、分けて確認する必要があります。

相続対象となるデジタル資産

ネット銀行、ネット証券など相続対象デジタル資産の種類を示すイメージ
金銭的な価値を持つデジタル資産は、原則として相続の対象となります。代表的なものには、次のようなものがあります。

  • ネット銀行: PayPay銀行、楽天銀行、住信SBIネット銀行、auじぶん銀行など
  • ネット証券:SBI証券、楽天証券、マネックス証券などで保有する株式や投資信託
  • 暗号資産(仮想通貨): ビットコイン、イーサリアムなど
  • オンライン上で管理される残高や証拠金: サービス上の売上金、電子マネー等の残高、FX・CFD口座の証拠金など

相続が難しいデジタル遺品(プライバシー性重視)

相続が難しいポイントやデジタル遺品(データ)のイメージ
これらは、利用規約によって本人以外への譲渡や引継ぎが制限されていることがあり、財産として相続できるものとは取扱いが異なります。

  •  ポイント・マイル:死亡時の取扱いはサービスごとに異なり、失効するものと、一定の手続きにより引き継げるものがあります。
  • アカウント: LINE、X(旧Twitter)、Instagramのアカウント自体
  • サブスクリプション: Netflix、Amazonプライム等の契約権
  • クラウドデータ: スマホ内の写真、Googleドライブ等のデータ


銀行名・証券会社が分からない時の調査方法

デジタル遺産の相続では、利用していた金融機関やサービスが分からないことがあります。むやみにパスワードを入力してアカウントをロックさせる前に、次の手順で確認します。

ネット銀行は「通帳の履歴」と「郵便物」から特定する

ネット銀行特定のため通帳の振込履歴を確認する女性
銀行預金には、証券会社の口座を確認する「ほふり」のような一括調査制度がないため、通帳、郵便物、メールなどの手がかりから利用していた銀行を確認します。


・メインバンクの通帳: 地銀やゆうちょ銀行など、給与振込や生活費に使っていた通帳を確認します。ネット銀行への振込や送金と思われる履歴があれば、利用していた銀行を特定する手がかりになります。

 

・郵便物: ネット専業銀行でも、キャッシュカードやデビットカードは郵送されます。

 

・メール検索: 故人のスマホが開ける場合、メールアプリで「銀行」「Bank」「開設」「振込」と検索し、ヒットした銀行名をリストアップします。


【追加】手がかりが少ない場合の「絞り込み調査」
 

上記の調査で特定できない場合、費用はかかりますが、以下の銀行に「個別照会」を行うことで発見できる可能性があります。


・メガバンク・大手ネット銀行への問い合わせ: 故人が利用していた可能性のある銀行の相続窓口へ問い合わせ、口座の有無を確認するために必要な書類や手続きを確認します。電話だけで口座の有無を教えてもらうことは、原則としてできません。

 

・生活圏の銀行確認: 故人の住所地や勤務地周辺にある信用金庫や地方銀行など、地域密着型の金融機関に限定して確認を行います。


【それでも銀行名が特定できない場合】
 

銀行預金には一括調査システムは存在しません。最後の手がかりとしては、過去の税務書類の確認が有効です。


確定申告に使用した添付書類(支払調書や特定口座年間取引報告書など)には、利息や配当を支払った取引先の金融機関名(銀行・証券会社)が記載されています。これにより、口座の存在を特定できる可能性があります。

ネット証券は「ほふり」への開示請求で一括調査

ほふり請求などネット証券の相続手続き資料
株取引の痕跡がある場合、「証券保管振替機構(通称:ほふり)」という機関を使うことで、国内の証券会社を一括で洗い出すことができます。


・できること:故人が振替株式等の口座を開設していた証券会社や信託銀行などを確認できます。

 

・費用: 1件あたり6,050円(税込)+郵送費等

 

・期間:書類の受付から開示結果の発送まで1か月程度

 

・注意点: 調査できるのは、ほふりの制度対象となる株式等の口座です。FX、暗号資産、海外口座は対象外です。

暗号資産・FXはスマートフォンやメールから確認する

暗号資産(仮想通貨)取引所アプリとパスワードのイメージ
これらは「ほふり」のような統合機関がないため、スマートフォンやメールが主な手がかりになります。


・アプリ一覧: 「Coincheck」「bitFlyer」「MT4/MT5(FXツール)」などのアプリが入っていないか確認します。

 

・メール検索: 「ログイン」「本人確認」「約款」「Coin」などのキーワードで検索し、取引所からの通知を探します。


デジタル遺産相続でやってはいけないNG行為・法的リスク

不正アクセス禁止法と「相続人の権限」

不正アクセス禁止法のリスクで困惑する高齢の相続人
・原則NG:故人のID・パスワードを使って、金融機関や取引所の口座へ勝手にログインすることは避けます。

 

・リスク: 相続人が「調査目的」で行う場合でも、他の相続人から資産隠しを疑われるトラブルの元になります。

 

・推奨アクション: ログインはせず、金融機関へ「死亡の連絡」を行い、正規の相続手続きを進めるのが最も安全です。

「単純承認」とみなされ相続放棄ができなくなるリスク

ログインして株式を売却したり、預金を別の口座へ送金したりすると、相続財産の処分として「単純承認」とみなされる可能性があります。後から故人に多額の借金(FXの損失など)が見つかっても「相続放棄」ができなくなる恐れがあるため、資産を動かす行為は慎重に行う必要があります。


【手続き編】ネット銀行・証券・暗号資産の解約フローと必要書類

資産の場所が特定できたら、具体的な手続きに入ります。

ネット銀行(PayPay銀行・楽天銀行など)

  1. 死亡連絡: カスタマーセンター等から連絡し、口座を凍結してもらいます。
  2. 書類受取: 銀行から相続届出書が郵送されます。
  3. 書類提出: 相続届、戸籍謄本、印鑑証明書など、銀行から指定された書類を返送。
  4. 払戻し: 手続き完了後、指定口座へ振り込まれます。

ネット証券(SBI証券・楽天証券など)

株式は、相続人の証券口座へ移管する方法が一般的です。

  1. 口座開設: 必要に応じて、相続人が同じ証券会社に口座を開設します。
  2. 移管依頼: 故人の株式を相続人の口座へ移します。
  3. 売却・現金化: 移管完了後、相続人の判断で売却が可能になります。 ※NISA口座内の株式は、相続人の特定口座へ移管され、非課税期間は終了します。

暗号資産取引所(Coincheck・bitFlyerなど)

  1. 死亡連絡: お問い合わせフォームより「相続」を選択して連絡。
  2. 本人確認: 相続人の本人確認書類等をアップロードまたは郵送。
  3. 換金・返金: 暗号資産の取扱いは取引所によって異なり、日本円に換金して相続人の銀行口座へ返金される場合があります。


【対策編】遺言書でデジタル資産トラブルを防ぐ方法

遺言書作成の鉄則と条項例

デジタル資産のトラブルを防ぐ遺言書と別紙目録
鉄則1:ID・パスワードは遺言書本文に書かない セキュリティ上、遺言書には書かず「別紙」または「エンディングノート」に記載し、遺言書でその保管場所を示すのが安全です。

 

鉄則2:包括的な表現を使う 「〇〇銀行」と特定しつつ、「その他一切のネット銀行」も含める条項にしておくと、口座が増減しても対応できます。


遺言書の記載例

 第○条 遺言者は、下記の預金口座を含む、遺言者名義の一切の預貯金を、妻・葛飾花子に相続させる。 (金融機関名:〇〇銀行 〇〇支店 口座番号:〇〇〇〇) なお、デジタル資産へのアクセス情報については、本遺言書と共に保管した「デジタル資産管理リスト」を参照すること。


自筆証書遺言の作成方法については、「【葛飾区】自筆証書遺言の書き方」もご確認ください。

遺言執行者を選任する重要性

デジタル資産の解約や名義変更などを確実に進めるため、遺言書で遺言執行者を指定しておく方法があります。


遺言執行者の役割や指定する際の注意点については、「遺言執行者とは?権限・義務・報酬相場」もご確認ください。


よくある質問(FAQ)|デジタル遺産相続の疑問を解決

デジタル遺産相続について専門家に相談する家族のイラスト

Q1. 故人のスマートフォンを家族がロック解除してもよいですか?
 

 A. 故人のスマートフォンを勝手に操作すると、他の相続人とのトラブルや、各サービスの利用規約上の問題が生じるおそれがあります。金融機関や取引所の口座にはログインせず、正規の相続手続きにより確認するのが安全です。


Q2. クレジットカードのサブスク(継続課金)はどうやって止めますか?
 

A. クレジットカード会社へ死亡の連絡を行い、利用明細から継続課金されているサービスを確認します。そのうえで、各サービスの解約手続きを行います。携帯電話料金や公共料金などが含まれている場合は、解約前に名義変更や支払方法の変更が必要です。


Q3. ネット銀行の口座は、遺産分割協議書がなくても解約できますか?
 

A. 遺言書の有無や相続人の状況、銀行所定の手続きによって異なります。遺産分割協議書が必要になる場合もあるため、まずは銀行の相続窓口へ確認します。


Q4. 海外の取引所(Binanceなど)の資産は相続できますか? 
 

A. 海外の取引所にある暗号資産も相続の対象となります。ただし、必要書類や手続きは取引所ごとに異なり、死亡証明書の翻訳や認証などを求められる場合があります。生前に利用している取引所や資産内容を一覧にしておくことが重要です。



まとめ:デジタル遺産は「場所の特定」が全ての始まり

デジタル遺産の相続では、手続きの難しさだけでなく、故人が利用していた銀行や証券会社を家族が把握していないことが大きな問題になります。


【本記事の要点まとめ】
  • 調査:郵便物、メール、通帳の履歴などから利用先を確認する。証券会社は、ほふりへの開示請求も利用できる。
  • 手続き:ネット銀行やネット証券も、各金融機関が指定する書類をそろえて相続手続きを行う。
  • 対策:生前に利用先や財産情報を整理し、遺言書とは別に一覧を残しておく。

デジタル遺産の把握は、遺言書を作成する際にも重要です。「遺言書作成チェックリスト50項目」も活用しながら、利用しているサービスや財産を整理しておきましょう。

「スマホの中に資産があるかもしれない」と不安な方へ

行政書士によるデジタル遺産調査・手続きサポート
「亡くなった家族がネット取引をしていた形跡があるが、詳しい内容が分からない」「仕事で忙しく、銀行や証券会社とやり取りする時間が取れない」という方もいらっしゃいます。


大塚法務行政書士事務所では、ネット銀行やネット証券などが判明した後の相続手続きや、デジタル資産に配慮した遺言書の作成をサポートしています。デジタル遺産を含む相続手続きや遺言書作成でお困りの方は、お気軽にご相談ください。


 デジタル遺産を含めた遺言書の作成を検討している方は、「【葛飾区】遺言書作成完全ガイド」もご確認ください。


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大塚法務行政書士事務所 代表行政書士 大塚 博幸
 

行政書士 大塚博幸(遺言・相続・お墓の専門家)
・東京都葛飾区金町出身。平成21年の開業以来、15年以上にわたり地域に密着して遺言・相続・墓じまいのサポートを行う。行政書士のほか、一級土木施工管理技士の資格を有し、建設コンサルタントとしての実務経験もある。

 
主なメディア実績

『週刊新潮』『女性自身』『産経新聞』など、お墓の専門家として取材協力多数。 著書に『行政書士が教える墓じまい・改葬の進め方』(税務経理協会)がある。


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