
遺言書を作成する際、このような不安を感じる方は非常に多いです。
遺言書に記載できる内容は、大きく、書くことで法律上の効力が生じる「法定遺言事項」と、家族への感謝や希望などを伝える「付言事項」に分けられます。
これらを混同して作成すると、希望した財産の承継が実現しなかったり、相続人間のトラブルにつながったりするおそれがあります。
この記事では、遺言書に書けること・書けないことの違い、法的効力のある「法定遺言事項」、家族への思いを伝える「付言事項」、無効になるNG例、実務上のトラブルを防ぐための注意点を行政書士が解説します。
【この記事でわかること】
葛飾区で遺言書作成を検討されている方は、まず全体像を「【葛飾区】遺言書作成ガイド」で整理しておくと安心です。

まず、遺言書に書くことで法律上の効力が生じる事項(法定遺言事項)について解説します。これらは、財産の承継や身分関係などを定める重要な内容です。
【法定遺言事項の3つの柱】
遺言書のメインとなる部分です。
・相続分の指定(民法902条):「長男に2分の1、次男に2分の1」というように、財産を分ける割合を指定することです。
・遺産分割方法の指定(民法908条):「自宅の土地建物は妻に、〇〇銀行の預金は長男に」と、具体的にどの財産を誰に渡すかを指定することです。財産と受け取る人を明確にしておくことで、相続開始後の手続きを進めやすくなります。
・遺贈・寄付(民法964条):法定相続人以外の人(長男の妻、孫、内縁の配偶者など)や、公益法人、社会福祉法人、認定NPO法人などの団体に財産を渡すことです。
→ 「 遺言書で社会貢献(遺贈寄付)する方法 」
・特別受益の持戻しの免除(民法903条):
【ポイント】
例えば、長男に生前、住宅取得資金として2,000万円を援助していた場合、その援助が特別受益に当たると、原則として相続分を計算する際に考慮されます。
しかし、遺言で、その生前贈与を相続分の計算に含めない意思を示すことにより、特別受益の持戻しを免除できます。ただし、他の相続人の遺留分を侵害する部分まで当然に認められるわけではありません。
・子どもの認知(民法781条)
婚姻関係にない相手との間に生まれ、まだ認知していない子を、遺言で認知できます。これにより、その子にも法律上の親子関係が生じ、相続権が認められます。
・未成年後見人の指定(民法839条)
未成年の子に対して親権を持つ親が一人だけの場合、その親は遺言で未成年後見人を指定できます。例えば、自分の死後に、子の生活や財産の管理を担う人を指定する場合です。
・相続人の廃除(民法893条)
遺留分を有する推定相続人から虐待や重大な侮辱を受けた場合などには、遺言で相続人の廃除の意思を示すことができます。遺言者の死後、家庭裁判所が廃除を認めた場合に、その相続人は相続権を失います。
・遺言執行者の指定(民法1006条)
遺言の内容を実現する責任者である遺言執行者を指定できます。指定しておけば、預金の解約や不動産の名義変更などを遺言執行者が進めることができ、相続人全員の署名や実印を集めずに手続きできます。
→ 「 遺言執行者とは?権限・義務・報酬相場 」
次に、遺言書に書くことはできても、法的な拘束力はない「付言事項(ふげんじこう)」について解説します。
遺言書の最後に付け加える、家族へのメッセージのことです。「家族仲良くしてほしい」「葬儀は家族葬にしてほしい」といった内容は、法律上の効力はありません。 しかし、実務上はこの付言事項があるかないかで、相続人の納得感が大きく変わり、「争族」を防ぐ決定的な要因になることが多々あります。

「長女・良子には、私の長い闘病生活を献身的に支えてもらい、本当に感謝しています。その感謝の気持ちとして、自宅を良子に相続させることにしました。長男・太郎も、どうか私の気持ちを汲んで、良子と仲良く助け合って生きていってください。」
「長男は一度も顔を見せに来なかった親不孝者だから、遺産は渡さない。」
解説: 遺言書は死後に全員が見るものです。批判的な内容は、残された遺族間の亀裂を決定的なものにしてしまい、かえって泥沼の争い(遺留分侵害額請求など)を誘発するおそれがあります。ネガティブな感情は書かないのが鉄則です。
→ 「 遺留分とは?侵害額請求権の基礎と改正民法 」
いくら想いを込めて書いても、法律のルールを外れると遺言書そのものが無効になってしまいます。実務でよく見かけるNG例をランキング形式で紹介します。

最も多いのがこれです。特に、日付、署名、押印、本文の自書など、自筆証書遺言の方式に関する不備には注意が必要です。
・日付の特定ができない
例:「令和〇年〇月吉日」はNG。「令和〇年〇月〇日」と特定必須
・押印がない
認印でも有効ですが、押し忘れは無効
・署名がない・自筆でない
自筆証書遺言は、原則として本文、日付、氏名を本人が自書する必要があります。ただし、財産目録はパソコンで作成した書面や通帳の写しなどを添付できます。その場合は、財産目録の各ページに署名・押印が必要です。
・加除訂正のルール違反
書き損じを修正する場合は、変更場所を示し、変更した旨を付記して署名し、変更箇所に押印するなど、法律で定められた方式を守る必要があります。訂正方法が複雑になるため、書き直せる場合は新しい用紙で作成し直す方が確実です。
【対策】
不安な場合は、法務局で保管してもらう「自筆証書遺言書保管制度」を利用するか、公証人が作成する「公正証書遺言」を検討しましょう。なお、法務局では遺言書の形式面を確認しますが、内容の有効性まで保証する制度ではありません。
→ 「 【葛飾区】遺言書作成完全ガイド」
→ 「 【葛飾区】公正証書遺言の作成ガイド 」
「私たち夫婦は、全財産をお互いに相続させます」と、1通の遺言書に夫婦2人で署名・押印して作成する共同遺言は無効です(民法975条)。
・なぜ無効か
遺言は、本人がいつでも自由に撤回できることが原則です。共同で作成すると、それぞれの意思や撤回の自由が制限されるおそれがあるため、共同遺言は禁止されています。
・対策
どんなに仲が良くても、必ず「1人につき1通ずつ」別々の用紙で作成してください。
「私の財産を、お世話になった人に任せる」だけでは、「誰に」「何を」渡すのか特定できず、金融機関や登記手続で遺言書だけでは手続きを進められないおそれがあります。
・対策
「長女・葛飾花子に」「〇〇銀行〇〇支店の預金を」と、第三者が見ても特定できるように具体的に記載してください。
法律上は有効でも、実務の現場では以下のようなケースでトラブルになることが多々あります。
遺言書を開封した際、財産分けの部分だけを見て「兄貴だけズルい!」と感情的になってしまったケースです。
「自宅とA銀行の預金」は書いてあったが、「B銀行の預金」が漏れていた場合、B銀行については遺産分割協議が必要になります。
「妻に相続させる」と書いたが、妻が自分より先に亡くなってしまった場合、その部分は無効となり遺産分割協議が必要になります。
→ 「 葛飾区での相続手続き・遺産整理サポート 」
遺言書の作成について、よくいただくご質問にお答えします。
A. 公序良俗に反する内容や、他人の権利を不当に制限する内容は、無効になる可能性があります。例えば、「長男の妻は再婚してはいけない」といった内容を書いても、法的な拘束力は認められません。家族への希望は付言事項として書くことができますが、相手に強制できるものではありません。
A. 基本的には法的効力はありません(付言事項扱い)が、書いておくことを推奨します。 「散骨してほしい」「葬儀はしないでほしい」と書いても、それを実行するかどうかは、葬儀やお墓、遺骨の管理を担う家族や祭祀承継者の判断に委ねられます。なお、葬儀費用の負担について希望を書いておくことで、相続人が遺言者の考えを確認しやすくなります。
A. 原則として遺言書が優先されます。ただし、遺言で遺産分割が禁止されておらず、相続人や受遺者などの関係者全員が合意した場合は、遺言書と異なる分け方をすることもできます。遺言執行者が指定されている場合は、その職務との関係も確認する必要があります。
→ 遺産分割協議について詳しくは「 遺産分割協議の進め方と準備の手順 」をご覧下さい。
A. 法的な影響力はありません。付言事項で「遺留分侵害額請求はしないでほしい」と書いても、請求する権利自体を消滅させることはできません。しかし、財産の分け方を決めた理由や親の思いを知ることで、相続人が遺言の内容を理解するきっかけになります。
A. 法律上、ペット自身を相続人や受遺者として財産を渡すことはできません。代わりに、ペットの世話をしてくれることを条件に、新しい飼い主へ財産を遺贈する「負担付遺贈」や、信託の仕組みを利用する方法があります。

遺言書は、単なる財産分けの指示書ではありません。法的効力のある内容と付言事項を正しく区別して記載することで、財産の承継だけでなく、家族への思いも伝えることができます。
以下の項目のうち、1つでも当てはまる方は、専門家への相談をおすすめします。
大塚法務行政書士事務所では、初回相談にて、ご家族や財産の状況、ご希望を確認し、遺言書に記載する内容を具体的に整理します。
自筆証書遺言や公正証書遺言の文案作成についてもサポートしています。まずはお気軽にご連絡ください。

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・東京都葛飾区金町出身。平成21年の開業以来、15年以上にわたり地域に密着して遺言・相続・墓じまいのサポートを行う。行政書士のほか、一級土木施工管理技士の資格を有し、建設コンサルタントとしての実務経験もある。
『週刊新潮』『女性自身』『産経新聞』など、お墓の専門家として取材協力多数。 著書に『行政書士が教える墓じまい・改葬の進め方』(税務経理協会)がある。
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