遺産分割協議書の書き方|ひな形・必要事項と実務のポイント

遺産分割協議書の書き方|ひな形・必要事項と実務のポイント

遺産分割協議書の書き方を行政書士が解説。ひな形、相続人・財産の特定方法、署名・押印、複数ページの作成方法、行方不明者や認知症の相続人がいる場合の注意点まで、実務上のポイントを整理します。
行政書士 大塚 博幸
行政書士 大塚 博幸

遺産分割協議書への署名捺印と実印のイメージ
大切なご家族が亡くなった後は、預貯金の解約や不動産の名義変更(相続登記)など、さまざまな相続手続きが必要になります。遺言書などで財産の取得者が決まっていない場合には、相続人全員で話し合い、その合意内容を「遺産分割協議書」にまとめます。


遺産分割協議書は、誰がどの財産を取得するのかを明確にし、預貯金の解約や相続登記などの手続きに使用する重要な書面です。財産の特定方法や相続人の記載、署名・押印などに不備があると、手続き先で確認や修正を求められることがあります。


この記事では、東京都葛飾区金町で2009年の開業以来、15年以上相続手続きを扱ってきた行政書士が、遺産分割協議書の書き方、ひな形、作成時の注意点を実務に沿って解説します。


相続手続き全体の流れや期限を先に確認したい方は「相続手続きの全項目一覧と期限」もご覧ください。


【この記事でわかること】

相続手続きの必要書類をデスクで確認するイメージ

  • 遺産分割協議書が必要なケースと不要なケース
  • 銀行・法務局などの手続きで注意したい書き方のポイント
  • 遺産分割協議書のひな形(作成例)
  • 戸籍や戸籍の附票を使った相続人調査のポイント
  • 行方不明者、認知症、遺言書がある場合などの注意点



なぜ遺産分割協議書の作成が必要なのか?

家族の間で話し合いがついているから、わざわざ書類にしなくてもいいのではないか?と思われる方もおりますが、実務上、遺産分割協議書が必要な理由は主に3点あります。

各種名義変更手続きで使用する

銀行口座の解約、不動産の相続登記、有価証券の名義変更などでは、遺言書がない場合、相続人全員の合意内容を確認するために遺産分割協議書を使用します。


必要書類は手続き先によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

将来のトラブルを防ぐ

相続人同士で一度は納得した分け方でも、後から認識の違いが生じることがあります。


合意内容を遺産分割協議書として残しておけば、誰がどの財産を取得するのかが明確になり、後日のトラブル防止にもつながります。

相続税申告や特例の適用に関係する

「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」は、誰がどの財産を取得するかが決まっていることが前提となる制度です。


そのため、相続税の申告期限までに遺産分割がまとまっていない場合は、いったん未分割のまま申告し、必要な書類を提出しておきます。その後、遺産分割が成立した段階で、要件を満たせば特例の適用を受けることができます。


遺言書がある場合でも遺産分割協議書が必要になるケース

遺産分割協議が必要なケースを検討する相続人のイメージ
「遺言書があるから遺産分割協議書は不要」と思われがちですが、遺言書の内容によっては、別途遺産分割協議が必要になります。


・遺言に記載されていない財産がある場合
遺言書作成後に取得した財産や、遺言書に記載されていない財産については、相続人全員で分け方を決める必要があります。

 

・相続人全員で内容を変更する場合
相続人全員と受遺者などの関係者が合意し、遺言執行者の権限などに問題がなければ、遺言書とは異なる分け方をすることができます。合意した内容は、遺産分割協議書などの書面にまとめます。

 

・遺言書だけでは取得者を確定できない財産がある場合
遺言書の内容だけでは誰が取得するか決められない財産や、遺言書の効力が及ばない財産については、その部分を遺産分割協議で決めます。



遺産分割協議書で失敗しない5つのポイント

15年以上の相続実務(2009年開業)の中で、銀行手続きや法務局での「法定相続情報一覧図」の申出実務において、実際に指摘を受けやすいポイントを5つに整理しました。

被相続人(故人)の情報を正確に記載する

相続手続きの重要ポイントを指差して確認する高齢夫婦
遺産分割協議書では、「誰の遺産についての合意なのか」を明確にする必要があります。そのため、被相続人の氏名、最後の住所、生年月日、死亡年月日などは、戸籍謄本や住民票の除票、戸籍の附票などの公的書類を確認して正確に記載します。


・氏名: 旧字体や異体字が使われている場合は、戸籍の記載を確認して記載します。

 

・生年月日・死亡年月日: 戸籍謄本の記載と一致しているか確認します。

 

・最後の住所: 銀行の届出が「〇〇1-2-3」といった略記であっても、「住民票の除票」または「戸籍の附票」の記載が「〇〇一丁目2番3号」であれば、その表記を確認して記載します。マンション名や「〇〇号室」の有無についても、除票や附票の記載を確認しておきます。


※戸籍一式が揃った後は、銀行解約や相続登記など複数の手続きを進めるため、「法定相続情報一覧図とは?」もあわせて確認しておくと便利です。

財産を「一意に特定」できる表現で書く

財産の特定が曖昧だと、名義変更などの手続きで確認や修正を求められる原因になります。遺産分割協議書には、他の財産と混同しないよう、内容を具体的に記載します。


不動産の場合

毎年送られてくる「固定資産税の納税通知書(課税明細)」だけで不動産を確認すると、評価額が免税点以下の土地や私道の共有持分などを見落とすおそれがあります。


そのため、実務では市区町村で「名寄帳」を取得して被相続人名義の不動産を確認し、必要に応じて法務局の「所有不動産記録証明制度」も利用します。この制度は2026年2月2日に始まったもので、被相続人が登記簿上の所有者として記録されている不動産を一覧で確認できるため、複数の市区町村に不動産がある場合などの調査に役立ちます。


不動産が確認できたら、法務局で最新の「全部事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、遺産分割協議書には「所在・地番・地目・地積」や「家屋番号・種類・構造・床面積」など、登記簿に記載された内容をもとに正確に記載します。


預貯金の場合

預貯金は、「〇〇銀行の預金一切」といった曖昧な書き方ではなく、通帳や残高証明書などを確認し、「銀行名」「支店名」「預金種別(普通・定期など)」「口座番号」を記載して、対象となる口座を特定できるようにします。


口座名義の漢字と戸籍上の氏名表記が異なる場合は、手続き先の金融機関に確認したうえで記載すると確実です。


※遺産分割がまとまる前でも、葬儀費用など急ぎの資金が必要な場合は「相続預金の払戻し制度(仮払い)」を利用できます。(※口座解約とは別の制度です)

署名・押印は戸籍と印鑑証明書を確認する

遺産分割協議書では、相続人全員の合意を明確にするため、実務上は各相続人が署名し、実印を押印して印鑑証明書を添付する方法が一般的です。


・住所・氏名の署名: 住所は印鑑証明書などの記載を確認し、氏名は戸籍上の表記も確認して記載します。旧字体や異体字が使われている場合は、戸籍の記載と異ならないよう注意します。
(間違えやすい漢字の例)「富」と「冨」、「斉・斎・齋・齊」、「吉」と「𠮷」


・実印の押印: 印影が欠けたり、重なったりすると、金融機関などで確認を求められる原因になります。実印は鮮明に押印します。

複数枚にわたる場合の契印

遺産分割協議書が2枚以上になる場合は、各ページが一続きの書面であることを明確にするため、契印をしておくのが一般的です。


実務では、協議書をホチキス止めしたうえで各ページのつなぎ目に契印する方法や、製本テープで袋とじにして、製本テープと本文の境目に契印する方法があります。


相続人全員が実印で契印しておけば、後からページが差し替えられたものではないことを確認しやすくなります。

後から財産が見つかった場合の取扱いも決めておく

どれほど丁寧に財産調査を行っても、後から休眠口座や未確認の財産が見つかることがあります。そのため、遺産分割協議書には、後から判明した財産を誰が取得するのか、またはどのように分けるのかをあらかじめ定めておく方法があります。


たとえば、「本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産については、相続人〇〇が取得する」といった条項を入れておけば、後から財産が見つかった場合の取扱いが明確になります。ただし、財産の内容や相続人間の合意によっては、特定の相続人にすべて取得させるのではなく、法定相続分や別に定めた割合で分ける方法もあります。


遺産分割協議書の作成例

以下は、実務で標準的に使用される作成例です。和暦表記をベースに構成しています。

遺産分割協議証書

 

令和〇〇年〇月〇日 〇〇〇〇の死亡により開始した相続に関し、共同相続人 〇〇〇〇、〇〇〇〇、〇〇〇〇は、民法908条に基づく遺言による分割の指定及び禁止のないことを確認したうえで、〇〇〇〇の遺産を協議により下記のとおり分割する。尚、本協議に参加した者の他に相続人は存在しない。

※誰がいつ亡くなったのか、相続人は誰か明確に記載します。相続人全員の協議が行われていない場合は、無効になります。

被相続人の最後の本籍 東京都 葛飾区〇〇 〇丁目〇番地〇
     最後の住所 東京都 葛飾区〇〇 〇丁目〇番〇号
     氏名 〇〇〇〇
     生年月日  昭和〇〇年 〇月 〇〇日
     相続開始の日 令和  〇年〇月〇〇日

※被相続人(故人)を特定する為、上記のように記載します。

第1条 次の不動産は相続人〇〇〇〇が取得する。
(1)土地
所在 東京都 葛飾区〇〇 〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 〇〇 〇.〇〇平方メートル
(2)建物
所在 東京都 葛飾区〇〇 〇丁目 〇〇番地〇〇 
家屋番号 〇〇番〇〇  
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階〇〇.〇〇平方メートル 2階〇〇.〇〇平方メートル

※不動産については登記簿謄本を取得して間違いの無いよう記載します。

第2条 現金及び次の預貯金は相続人 〇〇〇〇、〇〇〇〇が2分の1ずつ取得する。
①〇〇銀行 〇〇支店 普通・口座番号〇〇〇〇〇〇〇
②〇〇銀行 〇〇支店 普通・口座番号〇〇〇〇〇〇〇

※預貯金・有価証券等の財産を特定できる様に記載します。

第3条 家財道具その他の動産で被相続人の所有に係わる一切の物は、相続人〇〇〇〇が取得する。
第4条 被相続人の債務は、相続人〇〇〇〇が負担する。なお、葬儀費用についても相続人〇〇〇〇が負担する。

※相続人間で負担者を定めても、債権者の承諾がない限り、債権者との関係まで当然に変更されるものではありません。

第5条 前各条により分割した遺産以外の財産及び将来発見されるべき財産については、相続人〇〇が取得する。

※後から財産が発見された場合、どの様に分配するか記載しておきます。

以上のとおり協議が真正に成立したことを証するため、この協議書を3通作成し署名押印のうえ各自1通ずつ保管する。

※基本的には、相続人の人数分作成しますが、相続人が多い場合は、正副作成し代表者が保管する方法も考えられます。

令和  年  月  日

※協議が成立した日

相 続 人
住所:
氏名:                ㊞


相 続 人 
住所:
氏名:                ㊞


相 続 人 
住所:
氏名:                ㊞

※実務上は、相続人全員が署名し、実印を押印して印鑑証明書を添付する方法が一般的です。

※上記は参考例になります。実際に遺産分割協議書を作成される場合は、財産の内容、状況に合わせた遺産分割協議書を作成してください。もし、作成に不安がある場合は、当事務所にお気軽に問合せ下さい。


遺産分割協議の実務事例

実際の相続手続きでは、相続人の所在が分からない場合や、不在者財産管理人が必要になる場合など、通常とは異なる対応が必要になることがあります。ここでは、当事務所で取り扱った事例をもとに、実務上の対応をご紹介します。

相続人の所在調査

相続人の中に長年疎遠な方がいて、住所すら分からないケースがあります。当事務所ではまず「戸籍の附票」を取得し、現在の届出住所を確認します。


住所が確認できた後は、まず身内の方から相続の事実や状況を伝え、その後に遺産分割協議を進める方が、話し合いがスムーズに進みやすくなります。

不在者財産管理人

相続人の行方が判明しないケースでは、司法書士により家庭裁判所への申立てを行い、「不在者財産管理人」として弁護士が選任された事例があります。


このケースでは、当事務所が相続人の方々のお話を伺って遺産分割協議書案を作成し、不在者財産管理人の弁護士による確認や修正を経て書面を整えました。署名押印済みの協議書により、その後の銀行解約・入金まで完了しています。

家族信託の受益権と「特別受益」

上記のケースでは、相続人の一人が故人から信託された財産をお持ちでした。当初の協議書案に対し、不在者財産管理人の弁護士から「特別受益に該当するのでは」という話がありました。


そこで改めて相続人間で協議を行っていただき、特別受益を考慮した分配方法で合意。当事務所で再度協議書案を作成し、不在者財産管理人の弁護士による確認を経て、遺産分割協議書を完成させました。


遺産分割協議書Q&A

遺産分割協議書の書き方や手続きに悩む人のイメージ
日々の相談で寄せられる多くの質問から、特に重要なものを厳選して解説します。


Q1. 遺産分割協議書に有効期限はありますか?
 

A. 遺産分割協議書自体に有効期限はありません。ただし、銀行などの手続き先によっては、印鑑証明書について発行後一定期間内のものを求められることがあるため、事前に確認してください。


Q2. 内容を間違えて作成してしまった場合、修正できますか?
 

A. 軽微な誤字であれば全員の訂正印で修正可能ですが、基本的には再作成することをお勧めします。


Q3. 認知症の相続人がいる場合はどうすればよいですか?
 

A. 認知症であっても、遺産分割の内容を理解して判断できる意思能力があれば、本人が遺産分割協議に参加できます。意思能力が十分でない場合は、成年後見制度の利用を検討します。詳しくは「認知症の相続人がいる場合の遺産分割」をご覧ください。


Q4. 未成年者が相続人の中にいる場合は?
 

A. 親と未成年の子がともに相続人となり、遺産分割で利益相反となる場合は、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります。詳しくは「未成年の相続人がいる場合の遺産分割」をご覧ください。


Q5. 海外在住の相続人がいる場合の署名・捺印は?
 

A. 日本に住民登録がなく、印鑑証明書を取得できない場合は、現地の日本領事館等で「署名証明(サイン証明)」を取得し、相続手続きを進めます。


Q6. 借金(負債)も協議書で分けられますか?
 

A. 借金などの債務は、原則として法定相続分に応じて各相続人に承継されます。ただし、相続人同士で「特定の相続人が負担する」と決めても、債権者の承諾がなければ、その合意を債権者に対して主張することはできません。

【不備ゼロ】遺産分割協議書作成の最終チェックリスト

作成した書類を提出する前に、以下の項目を必ず確認してください。

遺産分割協議書の最終チェック

  • □ 被相続人の「出生から死亡までの戸籍謄本」をすべて揃え、相続人に漏れがないことを再確認したか?
  • □ 相続人全員の「現在戸籍」を取得し、全員が存命であることを証明できているか?
  • □ 相続人の氏名(旧字体や俗字を含む漢字)は、住民票や印鑑証明書だけでなく、「現在戸籍」の記載と一文字も違わず一致しているか?

記載内容と証明書に関するチェック

  • □ 被相続人の氏名・住所・生年月日・死亡日は証明書(除票・附票)通りか?
  • □  相続人全員の住所は「住民票・印鑑証明書」通りの正確な表記か?
  • □ 不動産の地番、家屋番号は登記簿謄本(全部事項証明書)通りか?
  • □ 預貯金の支店名、口座番号、口座名義は通帳通りか?
  • □ ページ間に相続人全員の契印(割印)は漏れていないか?
  • □ 署名の横に、実印が鮮明に(欠けずに)押されているか?
  • □ 印鑑証明書は、銀行など手続き先が求める発行時期の条件を満たしているか?


まとめ:遺産分割協議書は正確な作成が重要です

遺産相続の専門家による遺産分割協議のサポートイメージ
遺産分割協議書の作成では、相続人の確認、財産の特定、氏名や住所の表記、署名・押印などを正確に行うことが重要です。


特に、戸籍や住民票の記載、不動産の登記内容、預貯金の口座情報などに誤りがあると、その後の相続手続きで確認や修正が必要になることがあります。


2009年の開業以来、東京都葛飾区金町で15年以上相続手続きを扱ってきた当事務所では、相続人・相続財産の調査、戸籍等の収集、合意内容に基づく遺産分割協議書の作成、預貯金等の相続手続きをサポートしています。


遺産分割協議書の作成や相続手続きでお困りの方は、お気軽にご相談ください。


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大塚法務行政書士事務所 代表行政書士 大塚 博幸
 

行政書士 大塚博幸(遺言・相続・お墓の専門家)
・東京都葛飾区金町出身。平成21年の開業以来、15年以上にわたり地域に密着して遺言・相続・墓じまいのサポートを行う。行政書士のほか、一級土木施工管理技士の資格を有し、建設コンサルタントとしての実務経験もある。

 
主なメディア実績

『週刊新潮』『女性自身』『産経新聞』など、お墓の専門家として取材協力多数。 著書に『行政書士が教える墓じまい・改葬の進め方』(税務経理協会)がある。


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